2021年10月23日
軽視出来ない軽石被害
八月に小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」が噴火しました。規模は戦後国内で最大級のもの
その噴石となった軽石が2ヶ月ほどかけて今沖縄近海に押し寄せています。
沖縄県国頭村の辺土名漁港の漁港被害も深刻で生けすの魚が餌と間違えて死んだり、漁港に漂着して海面を埋めたり・・・
一面の碧い海が黄土色をした海面に姿を変え、浮遊した軽石は厚さがCDの直径一枚分にも達する程だとか
中には航行中の海上保安庁の船舶の冷却水取水口にこの軽石が詰まってエンジンの冷却が出来なくなり、航行不能に陥ってしまうと言う重大なトラブルも起きています。
北緯二十度に近い小笠原の近海は季節を問わず一定の東風が吹き付けるトレードウィンド=貿易風帯に入っています。海上に浮いている軽石はこの風の影響を受けて日本列島の西端にある沖縄周辺の海域に吹き寄せられたものと考えられます。
今読んでいる角幡唯介、著「漂流」もこの貿易風に流されたと見られる救命筏の行方を追った作品です。
1994年グアム近海で操業中だったマグロ漁船が浸水し沈没。太平洋の真っ只中で乗組員9人は非常装備の救命筏に乗り移ります。飲料水も非常用ビスケットも数日で底をつき、直ぐに救助されると言う乗組員の楽観視は裏切られたまま30日以上の月日が経ちます。
37日目に奇跡的にフィリピン漁船に発見、救助された場所はグアムから西に遠く離れたフィリピンの近海です。
著者の角幡さんは船長の本村実さんを訪ねて沖縄を目指しますが,留守宅の妻からは信じられない返答が返って来ました。
分厚いヴォリュームの本には沖縄の伊良部周辺の漁民たちの暮らしぶり、戦前戦中を挟み戦後の海人達がどの様な経緯で広い太平洋を目指したのか?37日間と言う想像を絶する漂流体験をどの様に生き抜いたのか?生存者の生々しい証言から、その実像に迫っていきます。東京からでも1,000kmを超える小笠原村、小型ヨットなら3〜4日もあれば着いてしまう距離ですが2ヶ月もあれば浮遊物が沖縄にまで届いてしまう。自然の不思議とスケール感大きさを感じずにはいられないニュースです。